少年野球で育つ「気づかう力」を家庭に持ち帰る方法|わが家のリアル体験と親の関わり方

野球を通じた成長・心の育成

少年野球のグラウンドに立っていると、「この子は家でもきっと周りをよく見ているだろうな」と感じる場面が何度もあります。声かけひとつ、ベンチでの待ち方ひとつにも、その子が日頃どんな環境で育っているのかがにじみ出るからです。

わが家には、少年野球を通じて成長してきた子どもたちがいますが、変わったのは子どもだけではなく、親である私たちの接し方や家の雰囲気も大きく変化しました。この記事では、「社会性」「マナー」といった少し固い言葉を、わが家の実体験に落とし込みながら、少年野球で育った力を家庭生活の中でどう活かしていくかを具体的に紹介します。

「野球を通じた心の成長全体について知りたい方は、野球が子どもに教えてくれた『挑戦する心』とその育て方の記事もあわせてご覧ください。」

野球で育つ「気づかう力」とは

チームプレーが教えてくれた「任せる」と「任される」

コーチを始めた頃、どの学年にも必ず一人は「全部自分でやりたいタイプ」の子がいました。
ピッチャーも打順も「オレがオレが」と前に出たがり、守備でボールが飛べば、隣のポジションまで追いかけていってしまうような子です。

ところがある試合で、彼が外野フライを追いかけて転び、その間にランナーが一気にホームインしたことがありました。ベンチに戻ると、普段あまり感情を表に出さないキャッチャーの子が、小さな声で「オレのボールだったよ」とつぶやいたのです。

その一言が効いたのか、次の試合から彼は「ここは任せた!」と声をかけて自分の守備位置にとどまり、結果としてチーム全体の守備範囲が広がりました。この「任せる」「任される」の感覚は、そのまま家庭にも持ち帰ることができます。

わが家では、試合から帰った夜に子どもたちと「今日のナイス任せたはどこだった?」という話題を出すようにしました。守備で任せた場面だけでなく、「今日は洗濯もの、弟に任せてくれて助かったよね」といった家の中のエピソードも一緒に振り返ります。

すると、上の子は自然と「じゃあ明日はオレが風呂掃除やるわ」と口にするようになり、「家の中にもポジションがある」という感覚が少しずつ根づいてきました。

挨拶と感謝を「儀式」で終わらせない工夫

少年野球の現場では、試合前後の整列や挨拶が「儀式」として定着しています。しかし、形だけの「お願いします」「ありがとうございました」で終わらせてしまうと、本当の感謝の力は育ちにくいと感じています。

そこでわが家とチームでは、「誰に、どんなことが、ありがたかったか」を言葉にしてみる時間を敢えて作りました。試合後の円陣で「今日一番うれしかった“ありがとう”」を一人ずつ話してもらい、家では寝る前に「今日のありがとうベスト1」を家族で共有するようにしています。

この習慣を続けていると、思わぬ場面で子どもたちの変化に気づきます。夕食の片づけを手伝ったとき、以前は無言で立ち去っていた長男が、「今日のカレー、いつもよりうまかった」と照れくさそうに言ったことがありました。

その一言に、妻も「じゃあまた作るね」と笑顔で返し、食卓の空気が一段と柔らかくなったのを今でも覚えています。形だけの「ごちそうさま」ではなく、自分の言葉で感謝を伝えようとする姿に、野球での経験が生きていると感じました。

ルールを「守らせる」から「一緒に決める」へ

野球ではルールを守れなければ試合が成立しませんが、家庭の中の「ルール」はどうでしょうか。​
親が一方的に決めた約束は、最初の数日は守られても、だんだん形骸化していくことを何度も経験しました。

そこでわが家では、野球の「サイン会議」をヒントに、家庭版の「ミニ作戦会議」を取り入れました。たとえばゲーム時間について、「平日は何時までならいいと思う?」と子どもに先に案を出してもらい、親の考えとすり合わせながら最終ルールを決めるようにしたのです。

この「ミニ作戦会議」を始めてから、ゲーム時間をめぐる親子バトルは目に見えて減りました。以前は「もう終わりなさい」「あとちょっと!」という押し問答が毎日のようにありましたが、いまはタイマーが鳴ると長男が「今日のサインはここまでだな」と笑いながら電源を切るようになりました。

自分が関わって決めたルールだからこそ、守ることに小さな誇りを感じているようです。​

家庭で活かすための具体的な工夫

家族で「役割分担」を体験する

野球の守備位置を説明するとき、「ここは君の守備範囲だよ」と具体的に線を引いてあげると、子どもはぐっと動きやすくなります。家庭の役割分担も同じで、「手伝いしてね」だけでは動き方が分からず、結果として何もできなくなってしまいがちです。

わが家では日曜日の朝に「一週間の家ポジション会議」と称して、ホワイトボードに「洗濯物」「風呂掃除」「ゴミ出し」などをポジションとして書き出し、それぞれの名前をマグネットで貼っていきます。

私の家庭でも、野球で培った「自分の持ち場を守る」意識が、家事分担や家族イベントの準備などで活きています。子どもが「今日は僕が買い物リストを作るね」と自発的に動いたときは、まさに野球で学んだ責任感が家庭に根付いた瞬間でした。

挨拶や感謝の言葉を日常に取り入れる

野球で身につけた挨拶や感謝の気持ちを、家庭でも積極的に使うようにしましょう。朝起きたときや帰宅時に「おはよう」「ただいま」と声をかけ合ったり、食事のときに「ありがとう」と伝える習慣を作ることで、家族の雰囲気も明るくなります。

ある教え子の家庭では、野球を始めてから「ありがとう」が自然に出るようになり、兄弟同士の関係も良くなったと聞きました。小さな言葉の積み重ねが、家庭の空気を温かくするのです。

ルールやマナーを家庭の中でも意識する

野球で学んだ「順番を守る」「ルールを守る」意識を、家庭でも活かしましょう。たとえば、兄弟げんかのときは「順番を決めて遊ぼう」「約束を守ろう」と声をかけると、トラブルが減り、子ども同士の信頼関係も深まります。

私の家庭でも、野球を通じてルールを守る大切さを学んだ子どもが、家でも自分から約束を守るようになりました。

兄弟げんかが減った「ベンチの約束」

「ありがとう」が自然に言えるようになったエピソード

最初のうちは「どうぞなんて言いたくない」と渋い顔をしていた子どもたちも、「一回だけ試してみよう」という合言葉をつけることで少しずつ行動が変わりました。ある兄弟は、ベンチでウォータージャグの順番をめぐって言い争いになりかけたとき、下の子が先に「どうぞ」と言いました。

すると上の子が、試合後の帰り道で「さっき譲ってくれてありがとうな」と照れながら肩をポンと叩いたのです。この出来事をきっかけに、わが家でもアイスの順番を決めるときに「ベンチの約束、発動する?」と声をかけるようになりました。​

兄弟げんかが減った理由

兄弟げんかは、わが家でも長いあいだ頭の痛いテーマでした。きっかけは本当に些細で、テレビのチャンネル、風呂に入る順番、アイスをどちらが先に選ぶか…。ある日、練習試合のベンチで同じような言い争いをしている兄弟選手を見たとき、「ここで変えないと家でも変わらないな」と感じました。

そこでチーム全体に「ベンチの約束」として、「文句を言う前に“どうぞ”を一回試す」というルールを導入しました。​

親の関わり方が子どもの社会性を底上げする

少年野球のコーチをしていると、つい「こうした方が早い」と先回りして指示を出したくなる場面がたくさんあります。しかし、子どもの社会性は「言われた通りに動く」だけではなかなか育ちません。

そこで意識しているのが、「5秒飲み込んでから声をかける」という親・指導者側のルールです。エラーした直後も、ミスで悔しそうにしているときも、まずは5秒だけ見守り、その間に子どもが自分から仲間に声をかけるか、自分のプレーを振り返るかを待つようにしています。

家庭でも同じように、「親が答えを先に言わない」ことを意識しています。例えば、宿題と素振りのどちらを先にやるか迷っているとき、「どっちが先だと思う?」とだけ聞いて、子どもに順番を決めさせます。

その上で、終わったあとに「自分で決めた順番、どうだった?」と振り返りの一言を添えるようにしました。結果が良くても悪くても、「自分で決めて動いた」という事実を認めることが、次の挑戦への土台になると感じています。

「親の関わり方が仲間との絆にどう影響するかは、少年野球をもっと楽しくする!親のサポートが生む仲間との信頼の記事でも詳しく紹介しています。」

家庭で実践できる「役割分担」と「家族会議」

「見守る」姿勢を大切にする

野球の現場では、子ども自身が考え、行動する機会が多くあります。家庭でも、親が先回りして手を出すのではなく、「どうしたい?」「どう思う?」と問いかけて、子ども自身に考えさせる時間を作ることが大切です。

私の家庭でも、子どもが自分で考えて行動したときは、結果よりも「自分で考えたこと」をしっかり認めるようにしています。

「家族会議」で意見を出し合う

この「家ポジション会議」は、単に家事当番を決めるだけではありません。最初に「今週楽しみにしていること」を一人ずつ話す時間を入れることで、子どもが自分の考えを言葉にする練習にもなります。

「土曜日の試合で盗塁を決めたい」「日曜日にじいじの家に行きたい」など、野球のことも家庭の予定もごちゃまぜで構いません。親はそれを聞きながら、「じゃあ試合前の金曜日は誰が夕飯のお手伝いをしてくれると助かるかな?」と、家事と子どもの楽しみをセットで考えていきます。

私の家庭でも、家族会議を通じて「みんなで決める楽しさ」や「意見が違っても尊重し合う大切さ」を実感しています。

まとめ:野球で育った力を家庭で活かすために親ができること

少年野球で子どもたちが身につけているのは、技術や体力だけではありません。仲間の表情を読む力、自分の役割を理解して動く力、感謝や譲り合いを言葉にする力など、社会に出てからもずっと役立つ力です。
その土台を家庭でどう育てるかは、親のちょっとした工夫次第で大きく変わります。「ベンチの約束」「家ポジション会議」「今日のありがとうベスト1」――どれも紙とペンがあれば始められる小さな仕掛けです。
ぜひあなたのご家庭ならではの言葉やルールを作り、少年野球で育った子どもの力を、毎日の生活の中でじっくり育てていってください。

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