少年野球で「自分を信じられる子」になるまで|わが家と教え子たちの7つのリアルエピソード

野球を通じた成長・心の育成

子どもが「自分はきっとできる」と信じられるかどうかは、勉強だけでなく友達との付き合い方や、新しいことへの一歩の踏み出し方にまで大きく影響します。少年野球のグラウンドと家庭の両方で親子を見てきた中で、「同じ実力なのに、親の接し方ひとつで自信の伸び方がまるで別人になる」と感じる場面を何度も経験してきました。



この記事では、実際にグラウンドや家庭で見てきた具体的なエピソードをもとに、「自分を信じられる子」に育っていった7つの関わり方を、今日から真似しやすい形でまとめてお伝えします。

「野球を通して挑戦する心を育てる体験談については、野球が子どもに教えてくれた『挑戦する心』とその育て方の記事もあわせてご覧ください。」

その子らしさを見つけて言葉にする

守備で固まっていたY君が変わった瞬間

「上手くできたときだけ褒められる」と思っている子は、少し難しい場面に出会うとすぐにブレーキを踏んでしまいます。一方で、「結果はどうあれ、自分という人間を受け止めてもらえている」と感じている子は、ミスをしても立ち止まらずにもう一度挑戦しようとします。

守備の打球を前にすると体が固まってしまう小学生のY君がいました。エラーをすると帽子のつばを深くかぶり、次の打球が飛んでくるのを怖がる姿が何度も見られました。ある日の練習後、お母さんから「うちの子は野球に向いていないのかもしれません」と涙ながらに相談を受け、「まず結果ではなく、Y君ならではの良さを一つだけ言葉にして伝えてみませんか」と提案しました。

それからお母さんは、「最後までボールを追いかけてたね」「ミスしたあとに、隣の子に『大丈夫だよ』って声をかけていたね」と、その日の中で光っていた行動だけを丁寧に拾って伝えるようになりました。

1か月ほどたったころ、同じようにエラーをした直後でも、Y君は口を真一文字に結びながら「次はもっと前に出てみる」と小さな声で言うようになり、守備位置に戻る背中からは少しずつ自信の芽が見え始めました。

ベンチが長かった子にかけた一言

別のチームには、試合ではほとんどベンチに座っている小学5年生の男の子がいました。ベンチからグラウンドを見つめる目は真剣なのに、帰りの車ではシートベルトを締めると同時にうつむいてしまう日が続いていました。

お父さんは、その姿を見るたびに「もっと頑張れよ」「練習でアピールしないとダメだぞ」と言ってしまい、自分でも「励ましているつもりなのに届いていない」と悩んでいました。そこでお父さんには、「もっと」と量を求めるのではなく、「どんな頑張り方をしているか」を認める言葉に変えてみましょうと提案しました。

次の練習後、お父さんはいつもの「頑張れよ」の代わりに、「今日のキャッチボール、ボールを大事に扱ってたな。相手が取りやすい球をずっと投げてたよね」と具体的な様子を伝えました。するとその日の夜、彼は自分からグローブを持ち出し、家の前の路地で壁当てを始めました。

1週間後には「今度は送球をもっと速くしたい」と自主練の内容まで口にするようになり、数か月後には守備固めとして終盤の重要な場面を任されるようになりました。

小さな成功を一緒に見つける

数行しか書けなかったMちゃんのノート

家庭で宿題を見ていると、「ここまでできるなら、もっとできるはず」と言いたくなる瞬間が何度もあります。ところが子どもが「もう少しやってみよう」と前に進めるのは、厳しい比較ではなく小さな達成を一緒に喜んでもらえたときです。

ノート1ページを書ききるどころか、数行だけで鉛筆を置いてしまう小学2年生のMちゃんも、まさにその一例でした。練習後に家庭訪問した日、リビングの隅に置かれた学習机に、開きかけのノートと消しゴムだけが置かれていました。

その横で体育着姿のまま座っていたMちゃんに、「今日は自分から机に座ったんだね。それってすごい一歩だよ」と伝えました。すると翌日、グラウンドに来たMちゃんが「昨日よりちょっとだけ多く書いたよ」と、ノートの写真を見せながら照れくさそうに報告してくれました。

その日から、「何ページ書けたか」ではなく「自分から机に向かった回数」や「昨日より1行多く書けたか」といった行動の第一歩を一緒に数えることが、彼女の自信の支えになっていきました。

「失敗から立ち上がる力を育てる声かけの具体例は、子どもの挑戦を輝かせる言葉の魔法|失敗から立ち上がる力を育む親の声かけ術記事でも紹介しています。」

「話を最後まで聞く」が信頼の土台になる

アドバイス続きで心を閉ざしていた男の子

「すごいね」「えらいね」といった言葉だけでは、子どもは「どこを頑張ればまた褒めてもらえるのか」が分からず、自分の成長を実感しにくくなります。逆に、行動や工夫を具体的に言葉にしてもらえると、「あのときと同じようにやってみよう」と自分で再現できる自信が少しずつ積み上がっていきます。

指導の合間に話を聞いてみると、その男の子は家で学校の出来事をほとんど話さないといいます。理由を詳しく聞くと、お母さんが「それはあなたも悪いんじゃない?」「もっとこうすればよかったのに」と途中でアドバイスを挟んでしまうことが多いと気づかれました。

そこで「まずは評価もアドバイスも一度脇に置いて、『へえ、そうだったんだね』と最後まで聞く練習を一週間だけしてみませんか」と提案しました。数週間後、「最近、子どもが夕食のときに自分からクラスの話や練習の出来事をしてくれるんです」と、少し驚いたような表情で報告してくれました。

否定されないと分かっている場所ができたことで、彼の中に「ここでは本音を話しても大丈夫」という安心感が生まれたのだと思います。​

小さな自己決定を積み重ねる

練習メニューを自分で作ったS君

日常のあらゆる場面で細かく指示を受け続けていると、子どもは「言われたことをこなすのが正解」と思い込み、次第に自分から動く力を失ってしまいます。反対に、「今日は自分で決めていいよ」という経験を少しずつ重ねると、「自分の判断でも大丈夫だ」という手応えが、自信の土台になっていきます。

受け身な性格で、いつもこちらの指示を待っていた中学生のS君に、ある日「今日はアップからノックまで、自分で練習メニューを組んでみようか」と任せてみました。S君はメモ帳を取り出し、「まずはストレッチ、そのあとキャッチボール、最後にノック」と、慣れない手つきで順番を書き出しながら、「失敗してもいいですか」と不安そうに確認してきました。

「もちろん。失敗しても、それを次の練習に生かせばいいからね」と伝えると、彼なりに工夫を加えたメニューで1時間の練習をやり切り、終わったあとに「自分で考えるって、ちょっと大変だけど意外と楽しいですね」と笑顔を見せてくれました。​

• 「先に宿題?それともお風呂?」
• 「今日の服はどっちにする?」

こうした小さな選択が、主体性の種になります。

買い物で「今日のおやつ係」になった女の子

グラウンドでいつも控えめな女の子の保護者から、「家でも自分の意見をあまり言わないんです」と相談されたことがありました。そこでお母さんは、週末の買い物でその子に「今日はおやつ係ね。家族みんなで食べるお菓子を一つ選んでみて」とお願いしてみたそうです。

娘さんはお菓子売り場の前でしばらく立ち止まり、値段や量、家族の好みを頭の中で並べるように何度も棚を見比べ、「今日はこれにする」と少し誇らしげに言ってカゴに入れたと聞きました。その日の夜、「これね、わたしが選んだんだよ」と。

家族に話す彼女の表情は、試合でのヒット以上に自信に満ちていて、小さな選択が自己肯定感につながる瞬間を家庭でつくれるのだと改めて感じさせられました。

挑戦を「親子の共有体験」にする

補助輪なし自転車に挑戦した日のこと

子どもにとって、新しい挑戦は「一人で乗り越えるもの」ではなく、「そばに一緒に走ってくれる大人がいるかどうか」でハードルの高さが大きく変わります。息子が補助輪なし自転車に挑戦した日、夏の夕方の公園で、最初の数メートルはサドルを支えながら横を走り、転んだら一緒に起き上がることを何度も繰り返しました。

何度目かのトライでふっとハンドルが安定し、息子のペダルがスムーズに回り始めた瞬間、手を放しても後ろ姿がぐんぐん遠ざかっていきました。そのとき振り返った息子が、「お父さんが一緒にいてくれると、転んでも怖くないんだ」と照れくさそうに言った言葉は、今でも強く心に残っています。

この経験から、「うまくできるかどうか」以上に、「失敗してもそばにいてくれる人がいる」と感じられることが、子どもの挑戦する力を支えているのだと実感しました。

縄跳びが苦手だった男の子と「毎日5分の約束」

体育の授業で縄跳びがうまく跳べず、「またみんなの前で失敗しちゃう」と肩を落としていた低学年の男の子がいました。お母さんは「それなら毎日5分だけ、一緒に『縄跳びタイム』を作ろうか」と提案し、夕食の前にリビングで親子並んで跳ぶ習慣をスタートさせました。

最初の数日は1回も続かずに引っかかってばかりでしたが、1週間後、10回連続で跳べた瞬間、本人以上にお母さんの目に涙が浮かび、その姿を見た彼は「また明日も一緒にやろう」と笑いながら言いました。

「練習しなさい」と背中を押すのではなく、「一緒にやろう」と横に並んでくれる存在がいることが、その子にとって何よりの安心材料になっていたのだと思います。​

愛情を「伝わる形」で積み重ねる

「大好きだよ」を言い始めた父と子どもの変化

心の中で思っているだけでは伝わりません。特に低学年の子どもには、言葉・スキンシップ・笑顔
の3つが心の栄養になります。あるお父さんが、照れながらも毎晩「今日も一緒にいてくれてありがとう」と伝えるようにしたそうです。

少年野球チームの保護者会で、あるお父さんが「毎晩寝る前に『今日も一緒にいてくれてありがとう』『大好きだよ』とだけは必ず伝えるようにした」と話してくれました。最初は布団の中で照れ笑いをしていた息子さんも、数週間後には自分からぎゅっと抱きついてくるようになりました。

「今日さ、学校でこんなことがあってさ」と、以前は話さなかったクラスでの出来事まで話してくれるようになったそうです。愛情の言葉は一度で劇的な変化を生む魔法ではありませんが、毎日の小さな積み重ねが、子どもの中に「何があってもここに戻ってこられる」という安心感を静かに蓄えていきます。​

失敗を「次の一歩」に変える言葉

結果が伴わなかったとき、それを「やっぱりダメだった証拠」ととらえるのか、「次への材料」として扱えるかどうかは、大人の一言に大きく左右されます。地域の絵画コンクールで入選を逃した小学生のGさんは、作品返却の日に「もう来年は出したくない」と泣きながら絵を抱えていました。

そのときお母さんは、「悔しいね。でも最後まで一枚を描き切ったことは、すごい挑戦だったよ。もし次に出すなら、どんな絵を描いてみたい?」と声をかけ、彼女の視線を「今回の結果」から「次にやってみたいこと」へとそっと向けさせました。

翌年、Gさんは自分から応募用紙をもらいに行き、テーマを決めるところからお母さんに相談しながら新しい一枚に挑戦していました。​

三振続きだった少年が「明日もバットを握ろう」と思えた理由

公式戦で三打席連続三振をしてしまった小学6年生の少年は、ベンチに戻るたびにバットを握る手が小刻みに震え、試合後には「もう打席に立ちたくない」とこぼしました。その日の練習終わりに、「結果は三振だったけれど、最後の打席のスイングは昨日より迷いがなかったね。

振り切れていたよ」と伝えると、彼は少し驚いた顔をしてから「じゃあ、明日も同じように振れるように練習してみる」と自分からバットを取りに倉庫へ向かいました。​

親自身が学び続ける背中を見せる

コーチの「新しい挑戦」に子どもが気づいた日

子どもは、大人が口で何を教えるか以上に、「どんな姿勢で物事に向き合っているか」をよく見ています。あるとき、自分なりに工夫した新しい守備練習をチームで試したものの、思ったような動きが引き出せず、子どもたちもどこかポカンとした様子で練習が終わってしまったことがありました。

その翌週、「先週のやり方はうまくいかなかったから、今日は少し変えてみるね」と伝えて新しい方法にチャレンジしたところ、練習後にある子が「先生も失敗するんだ。でも、次のやり方をまた考えてくるのってすごいね」とぽつりと言いました。

その一言で、「大人が完璧であること」よりも、「うまくいかないときにどう立ち上がるか」を見せることこそが、子どもの挑戦する心に火をつけるのだと強く感じました。

家庭を「心の安全基地」にする

どんな結果のときも戻ってこられる場所

試合で活躍した日も、エラー続きで落ち込んだ日も、同じように迎えてくれる家庭こそが、子どもにとって「心の安全基地」になります。親が日常の中で「どんな結果のときもあなたの味方だよ」というメッセージを、言葉と態度の両方で繰り返し示していくと、子どもは「ここに戻れば大丈夫」と感じ、自分らしく挑戦し続けることができます。​

まとめ:今日の一言が、子どもの一生の自信になる

ここまで紹介してきたエピソードに共通しているのは、「特別な才能」ではなく「日々の声かけや関わり方の小さな選択」が、子どもの自信を静かに育てていくということです。ありのままを認める、
小さな成功を一緒に喜ぶ、行動や努力を具体的に伝える、話を最後まで聞く、自己決定の機会を増やす、親子で挑戦を共有する、愛情を惜しみなく伝える、失敗を責めず次の一歩を応援する、そして親自身も学び続ける。これらの積み重ねが、「自分は大丈夫」「やってみよう」と自然に口にできる一生ものの自信につながっていきます。
すべてを一度に完璧にやろうとする必要はありません。まずは今日、子どもにかける一言だけでも変えてみることから始めてみてください。その小さな一歩が、数年後の親子の距離や、グラウンドでの子どもの表情を大きく変えているはずです。​

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