「パパ、野球ってやったら楽しいかな」春の夕食中、ゲームばかりしていた息子がふいにそう言いました。胸がじんわり熱くなる一方で、「いや、こっちはボールの握り方すら怪しいんだけど…」
という不安も同時に押し寄せてきました。
私は学生時代ずっと文化系。スポーツとは縁遠く、野球中継もほとんど見たことがない“完全未経験の父親”。それでも、息子の目の輝きを見た瞬間、「経験がなくても一緒に始めてみよう」と腹をくくりました。
ただ、いざ調べ始めると、道具、ルール、親の役割…情報の多さに圧倒され、最初の数週間は迷子状態。

この記事では、そんな私が息子と少年野球を始めて1年で見つけた、未経験でもできる親のサポート方法をまとめています。同じように「野球は分からないけど、子どもの気持ちには寄り添いたい」と思うママ・パパに向けて、リアルな体験談も交えてお伝えします。
「未経験でもできる親子キャッチボールの始め方については、キャッチボールで親子の絆を深めるためのコミュニケーション術の記事もあわせてご覧ください。」
最初にぶつかった壁:「何から始めればいい?」
息子が野球に興味を持ったのは、小学2年の春。クラスの友だちが少年野球に入っていて、休み時間にキャッチボールをしている姿が羨ましかったようです。体験会の日、私は仕事を早めに切り上げてグラウンドへ。
そこには、明らかに経験者らしいお父さんたちがずらり。アップの掛け声、専門用語、軽快なノック…。グローブのつけ方すらぎこちない私は、完全に場違いな気分でした。さらにコーチから、「保護者の協力があって成り立つチームです。付き添いや当番もお願いします」と言われた瞬間、「いやいや、ルールも分からないのに無理では…?」と心が折れかけました。
その夜、妻と話し合い、「できないことを数えるより、できることを一緒に探そう」と決めたのが、わが家のスタートラインでした。
未経験でもできた!わが家の5つのサポート実践例
素振りの「カウント係」になる
最初に取り組んだのは、技術指導ではなく数を数えるだけの役割。夕方、公園でバットを構える息子に、「今日は30回いってみよう」と声をかけ、私はスマホ片手にカウントするだけ。フォームの良し悪しは分からなくても、「今の音いいね」「あと5回いける?」と声をかけると、息子の表情がどんどん真剣に。
雨の日はタオルをバット代わりにして室内で素振り。「お父さんが数えてくれると頑張れる」と言われたとき、「未経験でも力になれるんだ」と初めて実感しました。
ミスだらけでも笑える「失敗OKキャッチボール」
キャッチボールを始めた頃は、親子ともにミスの連続。私の投げたボールは草むらへ、息子のボールは足元で止まる…。最初は謝り合ってばかりでしたが、途中から息子が「ドンマイ!」を連発し始め、ミスのたびに笑い合う空気に。
ある日、息子が「コーチとやるより、お父さんとだと失敗しても楽しい」と言ってくれたとき、「安心して失敗できる場をつくるのも親の役割なんだ」と気づきました。
YouTubeを“子ども先生”と一緒に見る
ルールや専門用語は、息子の提案でYouTubeの初心者向け動画を一緒に視聴。「この投げ方かっこいい」「今のストライク?」と息子が興奮気味に話す横で、私も「なるほど、これがファウルか」
と一緒に学ぶスタイルに。
気づけば、息子の方が覚えるのが早く、「それアウトだよ」と教えてくれることも増えました。“親が教える”ではなく、“一緒に学ぶ”この姿勢が、親子の距離をぐっと縮めてくれました。
技術は任せて、親は「観察とほめ言葉」に集中
グラウンドに行くと、経験者の親がフォームを細かく指導している姿が目に入ります。最初は焦りましたが、ある試合の日、息子に「ベンチで誰より声出してたね」と伝えると、驚くほど嬉しそうな顔に。そこからは、
・声を出した
・エラー後も下を向かずに動いた
・仲間に声をかけた
など、技術以外の“行動”に注目してほめるようにしました。すると息子は、「お父さん、ちゃんと見てくれてる」と自信を持つようになりました。
グローブのお手入れを「親子の会話時間」に
週末に30分だけ“お手入れタイム”を設定。タオルを敷いて、汚れを拭き、オイルを薄く伸ばす。
作業中は自然と会話が生まれ、「今日の練習どうだった?」「次はどこ守りたい?」と本音が出てくる貴重な時間に。
初めて自分で最後まで手入れした日、息子は「もっと大事に使う」と言い、道具を大切にする気持ちが育っているのを感じました。
「道具選びやはじめての練習の組み立て方については、はじめての少年野球チーム選びで後悔しないためにの記事も参考になります。」
周りの未経験ママ・パパから学んだこと
スマホ1つでできる「記録係」という関わり方
あるママは、走り回るのが苦手な代わりに、練習や試合をスマホで撮影して子どもと一緒に振り返るというスタイルを確立。「今日のスイング、前より良くなってるよ」と映像を見ながら伝えることで、子どもは「ちゃんと見てくれてる」と感じられるそうです。
祖父がキャッチボール係に就任した家庭
別の家庭では、おじいちゃんが週1でキャッチボール係に。散歩ついでに孫と公園へ行くのが楽しみになり、「最近おじいちゃんの足取りが軽い」と家族が驚くほど。野球が三世代をつなぐきっかけになるそんな素敵な例もありました。

知識ゼロでもできる「ごはんサポート」
あるママは、「ルールは分からないけど、ごはんだけは全力で応援」と宣言。試合前は好物のおにぎり、試合後は温かい汁物。「家に帰れば味方がいる」と感じられる最高のサポートです。
未経験の親だからこそ意識しておきたい3つのポイント
分からない技術を無理に教えようとしない
未経験の親が一番やりがちなのが、「うまくいかない理由」を技術の問題だと決めつけてしまうことだと感じています。実際、私も最初の頃はエラーが続くとついイライラしてしまい、「なんでそこで取れないんだ」「もっと前に出てボールを取れよ」と口にしてしまったことがありました。
そのとき、息子は悔しさと悲しさが混ざった表情で黙ってうつむき、その日の練習はそれ以上続きませんでした。帰り道で「お父さんとやるときは、失敗しても怒られたくない」と言われた一言は、今でも忘れられません。
それ以降は、自分の役割を「技術コーチ」から「良いところ発見係」に変えることを意識しました。ミスを責める代わりに、「今の一歩目は早かったね」「さっきよりボールに近づけていたよ」と、小さくても前向きな変化を見つけて言葉にするようにしています。
この方が、結果として子どもの自信もチャレンジする気持ちも育つと感じています。
経験者の親と自分を比べすぎない
グラウンドに立つと、どうしても周りの保護者と自分を比べてしまいます。ノックを打ち、専門用語を飛ばす経験者のお父さん、審判のお手伝いをテキパキとこなすお母さんを見て、「自分は何もできていない」と落ち込んだ日も少なくありませんでした。
ただ、ある試合のあとに息子から「今日はベンチにいるとき、ずっとお父さんの声が聞こえて安心した」と言われたとき、「自分ができていること」に目を向ける大切さに気づきました。そこからは、「他の親と同じことをしなきゃ」と考えるのではなく、「自分たちなりのサポートの形」を積み重ねることを意識するようにしています。
親の理想よりも、子どものペースを尊重する
野球を続けていると、つい「次の試合ではヒットを打ってほしい」「レギュラーになってほしい」と、親の気持ちが先走ってしまうことがあります。私も一時期、練習から帰ってきた息子に「今日は何本ヒット打てた?」「もっと自主練しないと試合で活躍できないよ」と、結果ばかりを気にする声かけをしてしまっていました。
すると、ある日を境に、息子が「今日は練習、見に来なくていい」と言うようになり、明らかに表情も固くなってしまいました。その姿を見て、「自分がプレッシャーを増やしていたのではないか」とハッとさせられました。
そこからは、「今日はどんな場面が楽しかった?」「一番うれしかったプレーはどれ?」と、結果ではなく「野球そのものを楽しめたかどうか」に焦点を当てて話すようにしました。すると、息子の方から「今度はこのポジションもやってみたい」「もっと遠くまで投げられるようになりたい」と、自然と新しい目標を口にするようになり、結果としてプレーも少しずつ安定してきました。


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