「お父さん、キャッチボールしよう!」という一言から始まった、わが家の週末の10分間は、最初は単なる野球の練習時間のつもりでした。ところが続けていくうちに、その時間はいつの間にか、子どもが学校や友だちのこと、本音の気持ちをぽつりと話し出す「親子だけの会話タイム」に変わっていきました。
この記事では、実際にわが家で試してきたキャッチボール中の声かけや沈黙の活かし方、他の家庭の工夫も交えながら、「親子の絆を深めるコミュニケーションのコツ」を具体的に紹介します。
「キャッチボールをきっかけに父子の距離が縮まった体験談は、少年野球が父子の距離を縮めた理由|キャッチボールで変わる親子コミュニケーションの記事もあわせてご覧ください。」
キャッチボールには「技術以外の力」がある
「キャッチボールは野球の基本」とよく言われますが、実際に続けてみると、その価値は技術練習だけではないと感じるようになりました。正面から向き合わず、少し距離を空けて横並びで立つこと。言葉より先にボールを投げ合うシンプルなやり取り。
沈黙が続いても不思議と気まずくならないリズム。この三つの条件がそろうことで、普段は多くを語らない子どもから自然と「今日さ、学校でね…」と本音が出てくる場面が増えていきました。
わが家流・キャッチボール中のコミュニケーション術
「ナイス!」から始まる肯定コミュニケーション
わが家で一番意識しているのは、キャッチボール中の第一声を「ナイス!」から始めることです。
ボールを捕れた瞬間に「ナイスキャッチ!」「今の取り方、かっこよかったな」とすぐに反応すると、子どもの顔がふっと明るくなり、その後の一球一球にも前向きな雰囲気が生まれます。
「ここがダメ」「もっとこうしろ」と修正点を伝える前に、「今できていること」にきちんと気づいてあげることで、子どものほうから「じゃあ次はこうしてみようかな」と、自然と試行錯誤を始めるのを何度も見てきました。
「沈黙OK」の時間をあえてつくる
キャッチボールの最中、あえて10球ほどは何も話さずに投げ続ける時間をつくるようにしています。その沈黙の時間の途中で、息子がふと「今日さ、友だちとケンカしちゃってさ」「理科のテスト、思ったよりできなかった」といった話をぽつりとこぼすことがあります。
そのときは、あえてすぐに言葉でアドバイスをせず、ボールを受け止めて静かに投げ返すことで、「ちゃんと聞いているよ」「ここでは何を話しても大丈夫だよ」というメッセージを伝えるイメージで向き合っています。
「質問攻め」ではなく「感想」を投げる
家の中ではつい「今日学校どうだった?」「宿題は終わった?」と質問が続きがちですが、キャッチボールのときは、できるだけ「感想」を先に投げるようにしています。
例えば、「今日のその服、なんかいつもより元気そうな色だね」「そのグローブ、だいぶ手になじんできたな」と、目に入ったことを素直に言葉にすると、「うん、今日さ、体育で…」「このグローブ、こないだ友だちにも褒められたんだ」と、息子のほうから話を広げてくれることが増えました。
質問で情報を聞き出すのではなく、「あなたを見ているよ」というサインを出すことで、子どもが自分から話したくなるきっかけを作れると感じています。
「野球やめたい」と言えなかった息子とのキャッチボール
ある週末、いつものように公園でキャッチボールを始めたものの、その日の息子は明らかにボールへの反応が鈍く、投げる球にも力が入っていませんでした。「どうした?」とすぐに聞きたくなる気持ちをぐっとこらえ、あえて普段どおりのテンポでゆっくりボールを投げ続けていると、数分後に小さな声で「俺さ、最近ちょっと野球がしんどいかも」とつぶやきました。
その一言に対して、「そっか。ここまでよく頑張ってきたもんな」とだけ返すと、息子はホッとしたように「怒られると思ってた」と続けてくれました。
その日を境に、練習に行く頻度や強度をこちら主導で決めるのではなく、本人と相談しながら調整するようにしたことで、しばらくしてから息子のほうから「やっぱり、もう一回しっかりやってみようかな」と自分の言葉で戻ってくることができました。
他の家庭の「キャッチボール活用術」
小5男子とお父さん:反抗期に効いた「無言キャッチボール」
チームメイトのお父さんから聞いた話です。小学校高学年になった息子さんは、家では「別に」「普通」としか答えず、LINEも既読スルーが当たり前になっていたそうです。それでも不思議なことに、「キャッチボール行くか?」と誘うと、文句を言いながらもグローブだけは持って公園に出てきてくれたといいます。
最初のうちは、ほとんど会話がないままボールを投げ合うだけの日が続きましたが、ある日突然「今日さ、部活の先輩に褒められてさ」と息子さんのほうから話が始まり、その日を境に少しずつ学校や部活の話をしてくれるようになったそうです。
そのお父さんは、「キャッチボールの時間が、息子にとって唯一“質問されない場所”だったからこそ、心の扉を開くきっかけになったのかもしれない」と話してくれました。
小1女子とお母さん:ミット代わりにぬいぐるみからスタート
別のご家庭では、野球経験ゼロのお母さんと小学1年生の娘さんが、最初は本物のグローブではなく、大きめのぬいぐるみを「ミット代わり」にして柔らかいボールを投げ合う遊びから始めたそうです。
リビングや近所の公園で、「今日はくまさんにキャッチしてもらおうか」と声をかけながらボールを受けると、娘さんは何度も大笑いし、その日の学校での出来事を楽しそうに話してくれるようになったといいます。
今では正式なグローブも購入し、練習の後に「今日一番楽しかったこと」をお互いに一つずつ話すのが親子の習慣になっているそうで、「最初は変わった遊びから入っても、続けることで立派な“親子時間”になる」と教えてくれました。
キャッチボールを習慣にするコツ
キャッチボールを親子の習慣として続けるためには、「完璧さ」を求めすぎないことも大切だと感じています。わが家で意識しているポイントは、次のようなものです。
時間は10分でもOKと決めておく(長くやる日があっても、基本は短時間で切り上げる)
「練習」というより「一緒に遊ぶ時間」として、勝ち負けより笑い声を大事にする
グローブがなくても、テニスボールやスポンジボール、ラケットなど家にある道具で代用してスタートする
固いルールやノルマは設けず、「今日は何球くらい投げてみる?」とその日の気分で決める
こうしたゆるい枠組みにすることで、親子ともに「やらなきゃ」ではなく「ちょっと外に出て投げようか」という軽い気持ちで続けやすくなります。
「自宅や公園での遊び練習アイデアは、おうちと近くの公園でできる!親子で野球をもっと楽しくする遊び練習術の記事も参考になります。」
まとめ:ボールは「気持ちを受け取り、返す」ためのツール
上手に会話を続ける必要も、ノーミスでボールを捕る必要もありません。「同じ方向を見ながら立つこと」「今日は1球だけでも投げ合うこと」「相手から来たボールをできる範囲で受け取って返すこと」。この三つがそろえば、立派な親子のコミュニケーションの時間になります。


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