「途中でやめてしまう」「続かない」。その悩みは親の根気や子どもの性格の問題ではなく、関わり方の“設計”が合っていないだけかもしれません。私自身、練習や勉強に集中できないわが子に何度も空回りし、やる気は押し込むものではなく、静かに“芽を保護して育てるもの”だと痛感しました。
この記事では、家庭と指導の現場で試し、効果を実感したやり方だけを厳選してお届けします。
やる気をしぼませる関わりの落とし穴
ケース1:努力の強要が招く「自分は向いてない」
サッカーを始めたばかりの息子がボールに苦戦していた日、私は「本気でやらないと意味がない」と言ってしまいました。翌日、息子は「向いてないかも」と後退。そこで問いを「今日は何が楽しかった?」に変えると、表情が緩み、練習へ戻る力が少しずつ戻りました。
ケース2:比較の冷気は、挑戦心を凍らせる
「Aくんは毎日練習してる」と伝えた瞬間、息子は「俺は俺でしょ」と不機嫌に。比較は“今の自分を認めてもらえていない”サインとして受け止められ、子どもの内側のエンジンを止めてしまいます。
「やってみよう」が生まれた小さな設計変更
体験1:絵は苦手——の固定観念が外れた日
私が「漫画キャラの模写ってどうやるんだろ?」と独り言。そこから親子で模写チャレンジへ。娘はアレンジを加える楽しさに気づき、「絵って意外と好きかも」と自己認識が更新されました。
体験2:勉強嫌いに“遊びの窓”をつける
「お父さんも英語やり直そうかな」と宣言して、英単語クイズを一緒にスタート。息子はそのうち「カード作るの楽しい」と自走に移行。学習を“競技”ではなく“遊び”として設計し直すだけで、入り口が広がります。
体験3:ミニトマトが教えてくれた自尊感情
家事に興味がなかった娘も、ベランダ菜園に「私もやる!」と参加。毎朝の成長チェックと収穫が「自分で育てた」という誇りへ。小さな成功は、“自分にもできる”という基盤を静かに築きます。
そのひと言を“やってみたいスイッチ”に変える
- 「やってみたら?」 → 「まずは5分だけ試す?」
- 小さく始める提案は、抵抗感を減らします。
- 「頑張って」 → 「楽しんでおいで」
目的を努力から体験価値へスライド。 - 「できた?」 → 「どんな場面が印象に残った?」
結果評価から経験の再発見へ。 - 「またやるの?」 → 「それ、気に入ってるね」
継続の事実を肯定的に鏡映。 - 「何がやりたい?」 → 「最近ちょっと気になることある?」
大きな志より“微細な好奇心”を拾う。
ヒント:声のトーンは「指示」ではなく「相談」「提案」。同じ言葉でも、受け取り方が変わります。
親が“やらせたい”と思ったときに陥りがちなNG例
まず最初に、過去の私が実際にしてしまった“やらせたい気持ちが前に出たパターン”を紹介します。
ケース①:「ちゃんとやって」「もっと頑張って」
息子がサッカークラブに入りたての頃、本人がボールをうまく扱えずイライラしているのを見て、私はつい「もっと本気でやらないと意味ないよ」と言ってしまいました。翌日、息子が「やっぱり自分には向いてないかもしれない」とポツリ。その言葉に胸が締め付けられ、私の声かけが息子のやる気を押しつぶしていたことに気づきました。
その後、同じ状況で私は「今日はどこが楽しかった?」と声をかけるようにしたところ、少しずつ表情が明るくなり、練習への気持ちも戻ってきました。
ケース②:「〇〇くんはもっとできてるよ」
比較は子どもの心を一気に冷やしてしまいます。ある日、「Aくんは毎日練習してるんだってよ」と何気なく言った私に対して、息子は明らかに不機嫌に。「俺は俺でしょ」という一言に、子どもの心の叫びが詰まっていました。
家庭で使える小さな仕掛け集
1週間ミニチャレンジ設計
月: 新しいことを5分だけ試す(動画一本、ドリル1ページ、素振り10回など)。
火: 体験メモを10秒書く(楽しかった/難しかった)。
水: 道具の手入れや環境準備(カード整理、ボール磨き)。
木: 友達や家族にひとつ共有(見せる、話す)。
金: 自分で次の小さな目標を設定。
土: いつもと違う場所で同じことをやってみる。
日: 1週間の「気づき」を親子で3つだけ言語化。
可視化ツール(A4で十分)
気づきログ: 日付/やった時間/面白かった瞬間/難しかった瞬間。
やってみたい箱: 紙に書いて箱へ。週末に2枚引いて、どちらかを選ぶ。
“やめてもOK”サイン: 片隅に「今日はここまで!」カードを置く。撤退の自由があると、挑戦は続きやすい。
親の立ち位置を「コーチ」から「伴走者」へ
- 伴走者の合図:
- 「一緒に考えよう」「試してみて、合わなければ別の方法を探そう」。
- 評価より承認:
- 「続けたね」「試したね」。結果が出なくても価値を認める。
- ペースを尊重:
- 速いより“自分の速さ”を守る。焦らせない。
まとめ:子どもの「やりたい!」は一緒に育てるもの
子どもの「やってみたい」は、突然のひらめきではなく、日々の関わりの“設計”から生まれます。小さく始める自由、失敗を受け止める安全、選ぶ負担を減らす工夫、プロセスを聞く問い、そして親自身が挑戦する姿。
この5つが揃うと、子どもの中の小さな芽は静かに根を伸ばし、やがて自分の言葉で「やりたい」を語り始めます。今日のひと言が、明日の5分につながる。5分の積み重ねが、自分で選ぶ力を育てる。親は“押す人”ではなく“寄り添う人”。
その立ち位置の変更こそが、途中で投げ出してしまう子を変える最短ルートでした。

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