少年野球の自主性アップ術|子どもが「やりたい」と言い出す家庭サポートガイド

チーム選び・保護者の役割

少年野球の練習になると「今日は行きたくない」「もうやめたい」と言い出す時期が、わが家にも何度か訪れました。振り返ると、その多くは子どもの根性不足ではなく、親である自分の関わり方や声かけが、子どものやる気と噛み合っていなかったことが原因でした。



グラウンドでの姿や家での様子を見続ける中で、「やる気は押し込むものではなく、静かに芽を守りながら育てていくもの」だと強く感じるようになりました。

この記事では、家庭と指導の現場で試し、効果を実感したやり方だけを厳選してお届けします。

「挑戦する心の育て方や親の関わり方については、野球が子どもに教えてくれた『挑戦する心』とその育て方の記事もあわせてご覧ください。」

やる気をしぼませる関わりの落とし穴

努力の強要が招く「自分は向いてない」

少年野球チームに入って間もない頃、ゴロ捕球で何度もボールを弾いてしまった息子に、思わず「本気でやらないと試合に出られないぞ」と言ってしまったことがあります。翌日、「やっぱり自分には向いてないかも」とつぶやく姿を見て、その一言が「自分はダメだ」というレッテルになってしまったと反省しました。

そこで、「今日は何回ボールに触れた?」「どのプレーがいちばん印象に残った?」と問い方を変えてみると、息子は失敗ではなく「強い打球が1球だけ止められたこと」を話してくれるようになり、数日後には自分からグラウンドに向かう足取りも少し軽くなりました。​

比較の冷気は、挑戦心を凍らせる

ある日、同じチームの仲間が自宅でも素振りを欠かさないと聞き、「Aくんは毎日素振りしてるらしいよ」と何気なく伝えたところ、息子は「俺は俺でしょ」とバットを置いてしまいました。親としては励ましのつもりでも、子どもからすると「今の自分は認められていない」というメッセージに聞こえてしまいます。

それ以降、「友だちと比較する言葉」はできるだけ飲み込み、「昨日より1球多く捕れたね」「前より声が聞こえるようになってきたよ」と、過去の自分との違いだけを言葉にするように心がけています。​

「やってみよう」が生まれた小さな設計変更

絵は苦手——の固定観念が外れた日

試合後の振り返りノートを書くのを嫌がっていた息子に、「プロ野球選手のフォームって、どうやって真似したらいいんだろうね?」と独り言のように話しかけたことがあります。そこから、親子で好きな選手の写真を見ながら、投球フォームを真似したイラストを描いてみる遊びに発展しました。

最初は「絵は苦手」と言っていた息子も、ユニフォームの背番号や帽子のマークを自分なりに描き込むうちに、「意外とこういうの描くの好きかも」と笑うようになり、結果として振り返りノートのハードルも下がりました。​

勉強嫌いに“遊びの窓”をつける

平日の宿題前はいつもダラダラしていた時期に、「今日は漢字ドリルを“3回勝負のクイズ”にしてみようか」と提案しました。1回目は親が問題を出し、2回目は子どもが親に出題し、3回目は互いに間違えた漢字だけを出し合うルールにしたところ、机に向かう時間が「対戦ゲーム」のような空気に変わりました。

「どうせやるなら、早く宿題を終わらせて勝負したい」という気持ちが芽生えたことで、声かけせずとも自分からドリルを開く日が増え、「勉強は退屈なもの」というイメージも少しずつ書き換わっていきました。

ミニトマトが教えてくれた自尊感情

シーズン前、「朝から素振りなんて無理」と言っていた息子に、「じゃあ、何回ならできそう?」と聞いてみると、「5回だけなら…」という答えが返ってきました。そこで、玄関にバットを立てかけ、素振りをした日はカレンダーに○をつける約束をしました。

1週間ほど続けると、○の数が増えていくのを見るのが楽しみになり、「今日は雨だったけど室内で5回は振れた」と自分から報告してくるようになりました。そのうち、「5回じゃ物足りないから10回にする」と息子自身が回数を増やし、小さな自信が積み重なっていくのを感じました。​

そのひと言を“やってみたいスイッチ”に変える

同じ内容でも、声かけを少し言い換えるだけで、子どもが受け取る印象は大きく変わります。少年野球や家庭学習の場面で使ってみて、実際に表情が和らいだと感じたフレーズをいくつか紹介します。​

「やってみたら?」 → 「まずは5分だけ一緒に試してみようか?」

「頑張って」 → 「今日はどんなことを楽しんで来られそう?」

「できた?」 → 「どのプレー(どの問題)が一番心に残った?」

「またやるの?」 → 「それ、かなり気に入ってるんだね」

「何がやりたい?」 → 「最近ちょっと気になっていることや、もう一回やってみたいことはある?」

トーンは「命令」ではなく「相談・提案」を意識し、「一緒に考えたい」という気持ちがにじむような言い回しにすると、子どもも素直に本音を話しやすくなります。

「失敗から立ち上がる力を育てる声かけの具体例は、子どもの挑戦を輝かせる言葉の魔法|失敗から立ち上がる力を育む親の声かけ術の記事でも紹介しています。」

親が“やらせたい”と思ったときに陥りがちなNG例

練習や宿題に消極的な様子を見ると、親の方が焦ってしまい、「せっかく入ったんだから」「もっと真剣にやってほしい」と熱くなりがちです。そんなときに出てしまいやすい言葉ほど、子どものやる気を静かにしぼませてしまうことがあります。​

「ちゃんとやって」「もっと頑張って」

守備練習でエラーが続いた日、悔しそうにしている息子に向かって「もっとちゃんと捕らないと、試合に出してもらえないよ」と言ってしまったことがあります。その夜、「オレが出ない方がチームのためかも」と小さくつぶやく声を聞き、自分の言葉が息子の自信を大きく削ってしまったと痛感しました。

それからは、「もっと頑張って」ではなく、「さっきの打球、グローブには当たっていたね。次は一歩だけ前に出てみようか」と、行動のヒントを具体的に伝えるように意識しています。結果そのものより、「次にどう工夫できるか」を一緒に考えるスタイルに変えたことで、練習後の表情も柔らかくなりました。​

「〇〇くんはもっとできてるよ」

夏休みの自主練が少ないことを気にして、「同じポジションのBくんは、毎日素振りしてるらしいよ」と伝えたことがあります。その瞬間、息子の顔から笑顔が消え、「比べられるの、正直つらい」とはっきり言われました。

そこで、「じゃあBくんじゃなくて、昨日の自分と比べてみようか」と提案し、「今週、自分で決めたい目標」を一緒に紙に書き出すようにしました。他の子を引き合いに出したくなったときほど、「親の焦りが前に出ていないか」を自分に問い直すサインだと考えるようにしています。​

家庭で使える小さな仕掛け集

わが家で実際に行っている「1週間ミニチャレンジ」の例を紹介します。親が予定を一方的に決めるのではなく、子どもと相談しながら調整できる形にしておくのがポイントです。​

月:新しいことを5分だけ試す(新しい素振りフォーム、別メニューの体幹トレーニング、新しいドリル問題など)

火:その日に印象に残ったことを10秒だけメモする(うまくいったプレーでも、悔しかったプレーでもOK)

水:道具と環境のメンテナンスの日(グローブの手入れ、スパイクの泥落とし、勉強机の片づけ)

木:その週に頑張ったことを家族か友だちに1つだけ話してみる

金:来週に向けて「自分で決めるミニ目標」を1つ書く(素振りを3回増やす、ノートに1行だけ振り返りを書くなど)

土:平日とは違う場所で同じことをやってみる(公園で素振りをする、リビングで勉強するなど)

日:1週間を振り返り、「うれしかったこと」「難しかったこと」「来週試したいこと」を親子で3つずつ言葉にする

特別なアプリやノートがなくても、A4用紙とペンだけで「がんばり」や「やってみたい」を見える形に残せます。​

気づきログ:用紙を4つに分け、「日付」「今日やったこと」「おもしろかった瞬間」「難しかった瞬間」を簡単にメモする

やってみたいメモ:ふと思いついた「やってみたい練習」や「もう一度挑戦したいこと」を小さな紙に1つずつ書いて箱に入れておき、週末に2枚だけ引いてどちらかを選ぶ

“今日はここまで”カード:リビングの一角にカードを置き、しんどくなったときは子どもが自分でカードを出して休憩を宣言できるようにする
「やめてもいい」と決めておくことで、子どもは安心して一歩目を踏み出しやすくなり、結果的に挑戦が続きやすくなります。​

親の立ち位置を「コーチ」から「伴走者」へ

ベンチからグラウンドを見ていると、「もっと走れ!」「なんでできないんだ!」と、ついコーチのように指示を飛ばしてしまう保護者の姿を見かけます。かつての自分も同じように、子ども以上に熱くなって声を荒らげていた時期がありました。

そこから意識したのは、「やり方を教える人」ではなく「一緒に試行錯誤する伴走者」になることです。「一緒に考えてみようか」「試してみて合わなかったら、別の方法を探そう」と声をかけると、子どもは失敗しても見捨てられない安心感を得ます。

また、「今日はいつもより走るペースはゆっくりだったけれど、最後まであきらめなかったね」「雨の中でもベンチから声を出し続けていたね」と、結果ではなくプロセスを言葉にすることで、「自分のペースで成長していい」というメッセージを届けられます。

まとめ:子どもの「やりたい!」は一緒に育てるもの

子どもが自分から「野球に行きたい」「もう一度チャレンジしたい」と言えるようになるまでには、時間も試行錯誤も必要です。

親が焦って結果だけを求めるのではなく、小さく始める自由、失敗しても責められない安心、選ぶ負担を減らす工夫、プロセスを聞く問いかけ、そして親自身も挑戦してみせる姿が重なって、少しずつ「自分で決める力」が育っていきます。

今日かけたひと言が、明日の5分の素振りや、1行の振り返りノートにつながるかもしれません。その小さな積み重ねこそが、少年野球を通して「自分で選び、粘り強く続ける力」を育てる一番の近道だと感じています。

今日のひと言が、明日の5分につながる。5分の積み重ねが、自分で選ぶ力を育てる。親は“押す人”ではなく“寄り添う人”。その立ち位置の変更こそが、途中で投げ出してしまう子を変える最短ルートでした。

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