甲子園の熱気と涙から──私が子どもたちに「野球の楽しさ」を伝え続ける理由

高校3年の夏、私は地元の小さなバッティングセンターで汗まみれになりながら、泣き笑いして過ごしてきた時間の集大成として、ついに憧れの甲子園のマウンドに立ちました。巨大会場の地響きにも似た歓声、静まりかえった一球ごとの緊張、ベンチで交わす仲間の励まし……。

試合に勝つことももちろん大切。でもそれ以上に、仲間の支えや、自分自身の野球にかける純粋な気持ち、「好きだから全力でできる」という思いの尊さを、甲子園という特別な場所で心の底から実感することができました。

甲子園で学んだ「楽しむ心」の原点

勝利への執着だけでは得られないもの

私たちのチームは強豪と呼ばれる存在ではなく、むしろ県大会でも苦戦続き。「どうすれば勝てるのか?」と、重圧や不安でつぶれそうになる日々でした。しかし、ある晩、監督が黙って差し入れてくれたアイスキャンディーを囲んで、涙ぐみながら語り合った時間が今でも忘れられません。ただ一心に「仲間と野球をやれて楽しい!」と感じる瞬間――それこそが本当に大切なのだと気づきました。

甲子園の試合当日、ふとグローブを見つめていた私に、キャプテンが「笑ってる方がいい球投げられるぞ!」と声をかけてくれました。結果だけを追うと呼吸も浅くなりがちですが、そのとき思い切り深呼吸してみたら、不思議と心がほどけて、まるで小学生の頃に戻ったように楽しめました。

「エンジョイ・ベースボール」の精神

私が実際に甲子園で感じたのは、強豪校ほど「伸び伸びと楽しむ雰囲気」を持っていることでした。特に、試合前の練習時に、相手校のキャッチャーが「昨日の晩ごはん何食べた?」なんて気さくに話しかけてくれたことが印象的です。その軽やかな空気に救われて、いつの間にか自分も肩の力を抜いてプレーできました。

後日知ったのですが、その選手は「お互いに本気でぶつかりながらも、最高の青春を一緒に楽しみたい」と心から願っていたそうです。監督も「野球の神様は、野球を楽しんでいる選手のところにチャンスを運んでくれるぞ」と繰り返し語っていました。その言葉を実感した瞬間が、人生で何度もありました。

「楽しさ」が子どもたちの成長を加速させる理由

楽しみながら成長する力

厳しい練習や勝敗へのこだわりだけでは、子どもたちのやる気や集中力は長続きしません。野球を楽しむことで、脳が活性化し、技術や知識の吸収も早くなります。現在、私は中学生の野球チームで指導する機会が多いのですが、そこで強く感じるのは「楽しいと感じている子ほど、伸びる」という事実です。

ある日、守備練習が終わった後に小さな簡易ゲームを取り入れてみたところ、一人の選手が「今日の練習が一番楽しかった!」と興奮気味に話してきました。その子は数か月前までエラー続きで消極的だったのですが、その日を境に声がけが増え、率先して仲間を励ます姿が見られるようになりました。

厳しい指導だけでは届かなかった「自主性」や「楽しさ」が、本人の成長につながることを身をもって確信しています。

失敗を乗り越えるメンタルの強さ

野球の現場には「ミス」による涙が数えきれないほど流れます。私も甲子園で、九回裏、同点に追いつかれた時、悔しさでグラブを思わず強く握りしめました。その直後、ベンチで監督が「次の一球を思い切り楽しめ!」と声をかけてくれたことで気持ちが切り替わり、最後まで笑顔でプレーできたことを今も鮮明に覚えています。

この経験を語ることで、子どもたちにも「失敗しても怖がらなくていい」「挑戦を楽しもう」という前向きな姿勢を伝え続けています。

甲子園で出会った仲間たちとのエピソード

仲間とともに味わう楽しさ

甲子園では、全国から集まった強豪校の選手たちと同じグラウンドに立ちました。勝ち負けを超えた友情や、試合後のさわやかな握手、応援団や観客の熱気――どれもが「野球ってやっぱり楽しい」と思える瞬間でした。

ある試合で敗れたとき、相手チームの選手とお互いを讃え合い、「また野球を楽しもう」と笑い合ったことが今でも心に残っています。

自分たちで考え、工夫する楽しさ

私の高校時代、監督から「次の試合までに新しいサインを考えてみろ」と言われ、仲間と夜遅くまでアイデアを出し合ったことがあります。

自分たちで作戦を練り、実際に試合で成功したときの喜びは格別でした。こうした「自分で考えて楽しむ」経験が、野球の面白さをさらに深めてくれました。

指導現場で感じる「楽しむ心」の効果

厳しさと楽しさのバランス

私がコーチとして大切にしているのは、「厳しさ」と「楽しさ」のバランスです。技術や体力を伸ばすためには時に厳しい指導も必要ですが、子どもたちが「野球って楽しい!」と感じる時間を意識的に作るようにしています。

たとえば、練習の終わりにミニゲームを取り入れたり、時には子どもたち自身に練習メニューを考えさせたりすることで、主体性や創造性が育まれます。

楽しさがチームワークを生む

野球を楽しむことで、チーム全体の雰囲気も明るくなります。笑顔や声かけが増え、自然と助け合う空気が生まれます。私のチームでも、楽しさを大切にすることで、選手同士の信頼関係が深まり、試合での粘り強さや逆境を乗り越える力が身につきました。

保護者や周囲の大人ができること

「楽しむ心」を見守る姿勢

保護者の方から「うちの子が野球を続けられるか心配です」と相談されることがあります。そんな時、私は「まずは一緒に楽しんでみてください」と伝えています。野球の現場には「ミス」による涙が数えきれないほど流れます。私も甲子園で、九回裏、同点に追いつかれた時、悔しさでグラブを思わず強く握りしめました。

その直後、ベンチで監督が「次の一球を思い切り楽しめ!」と声をかけてくれたことで気持ちが切り替わり、最後まで笑顔でプレーできたことを今も鮮明に覚えています。この経験を語ることで、子どもたちにも「失敗しても怖がらなくていい」「挑戦を楽しもう」という前向きな姿勢を伝え続けています。

結果よりも過程を大切に

甲子園で学んだのは、勝ち負けや結果だけが全てではないということ。努力の過程や仲間との時間、その中で生まれる小さな成長や発見こそが、野球の本当の価値だと感じています。

保護者の皆さんにも、子どもの成績や結果だけでなく、「今日はどんなことが楽しかった?」と声をかけてあげてほしいと思います。

まとめ――「野球を楽しむ心」を伝え続ける理由

甲子園での経験や、指導現場での多くの出会いを通じて、私は「野球を楽しむ心」こそが子どもたちの成長や人生の財産になると確信しています。甲子園での経験、指導者として子どもたちと向き合う日々を通じて、私は「野球を楽しむ心」が人としての強さや優しさを育ててくれると強く実感しています。

どんな逆境でも、仲間と笑い合い、自分の思いを大切にできる人間こそ、将来人生でも輝くことができる。野球を楽しむことは、結果的に子どもたちの人生そのものを豊かにし、困難に立ち向かう力を編み出してくれるのです。

私もこれから指導者という立場で、子どもたちひとりひとりの「楽しい!」を発掘し、野球を通して人間としての成長の土台を作りたいと心から願っています。

 

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