保護者からの相談に答えてきた中で見えた親子の成長ストーリー

少年野球のコーチとして20年以上活動してきた中で、数えきれないほどの保護者から相談を受けてきました。子どもが思うように上達しない、試合に出られない、やる気が続かない、親子関係がギクシャクしてしまう――。

保護者の悩みは多岐にわたります。そんな相談を重ねる中で、私が強く感じてきたのは「親子で悩み、向き合い、乗り越える経験そのものが、子どもと親の成長につながる」ということです。本記事では、実際の相談事例や私自身の体験談を交えながら、親子の成長ストーリーをお伝えします。

試合に出られない悩み――親子で乗り越えたA君のケース

「なぜうちの子はベンチなのか?」という相談

ある日、A君のお母さんから「なぜうちの子は試合に出られないのでしょうか?」という相談を受けました。

A君は練習熱心で、決して手を抜くタイプではありません。しかし、試合になると緊張して実力を発揮できず、ベンチにいる時間が長くなっていました。お母さんは「本人も落ち込んでいて、家でも元気がありません」と心配そうに話してくれました。

「助言を求める」スタンスの大切さ

このような場合、保護者が「なぜ出さないのか」と不満をぶつけるのではなく、「どこを伸ばせば試合に出られるようになるか」と助言を求める姿勢が大切です。

A君のお母さんには「A君の良いところと、もう少し頑張ってほしいポイント」を率直に伝えました。また、A君自身にも「何を克服すれば出場機会が増えるか」を一緒に考える時間を作りました。

親子で目標設定、少しずつ自信を積み重ねる

A君とお母さんは「今週は素振りを毎日50回」「次の練習では大きな声で挨拶をする」など、親子で小さな目標を立てて取り組みました。

お母さんはA君の努力を日記に記録し、時には「今日はよく頑張ったね」と声をかけるだけにとどめるようにしました。この「見守る距離感」がA君の自立心を育て、やがて試合でも堂々とプレーできるようになりました。

やる気が続かない悩み――親の気持ちが子どもに伝わるBさんの話

「親が関わらないといけない」と気づいた瞬間

Bさんのご家庭では、共働きで送り迎えは祖父母に頼ることが多く、最初は「子どもが楽しんでいるならそれで良い」と思っていたそうです。

しかし、次第に子どものやる気が落ちてきて、練習に行く足取りも重くなっていきました。職場の先輩ママに相談したところ、「子どものやる気は親次第だよ」とアドバイスされ、ハッとしたそうです。

親が変われば子どもも変わる――親子で再スタート

Bさんは「自分のやる気が子どもにも伝わっていた」と気づき、積極的に練習を見学したり、休日にキャッチボールに付き合うようになりました。すると、子どもも徐々に練習に前向きになり、表情が明るくなっていきました。親子で一緒に目標を立て、達成したら一緒に喜ぶ――そんな日々を重ねるうちに、Bさん親子は以前よりも強い絆で結ばれていきました。

補欠でも親子で成長できる――C君家族の前向き戦略

「補欠でも腐らずに前向きに」

C君は入団当初からなかなかレギュラーになれず、補欠の期間が長く続きました。親御さんも「このまま続けて意味があるのか」と悩み、私に相談してきました。私は「補欠の時間こそ、忍耐力や協調性、観察力など、野球の技術以上に大切な力を育てるチャンスです」と伝えました。

親子で「今できること」に目を向ける

C君と親御さんは「ベンチから声を出してチームを盛り上げる」「苦手なフライを克服する」など、今できることに積極的に取り組むようになりました。

親御さんも「子どもの努力を認め、前向きな言葉をかける」ことを意識し、親子で成長を実感できるようになりました。やがてC君は試合で代打として起用され、見事にヒットを打つことができました。この経験は親子にとってかけがえのない財産となりました。

「教えすぎ」から「見守る」へ――Dさん家族の気づき

親が口を出しすぎてしまう悩み

Dさんは野球経験者で、つい子どもに細かく指示を出してしまうタイプでした。しかし、子どもはなかなか伸び悩み、親子関係もギクシャクしてしまいました。Dさんから「どうしたら子どもが自分で考えて動けるようになりますか?」と相談を受けました。

「自分で発見する」ことの大切さ

私は「教えすぎず、ヒントを与えるだけで十分です。子どもが自分で気づくことが一番の成長につながります」とアドバイスしました。

Dさんは「今日はどうだった?」「自分で考えてみて」と問いかけるスタイルに変え、子どもが自分なりに工夫して練習するようになりました。親子の会話も増え、子どもは自信を持ってプレーできるようになりました。

親子の距離感――「見守る」ことの力

ガミガミ言わず、そっと見守る母親の力

名門校の監督からも「母親は後ろから見守るくらいが良い」とアドバイスを受けたことがあります。私自身も、親御さんには「細かく口出しせず、努力や習慣をそっと見守ってあげてください」と伝えています。

子どもは親の視線や態度を敏感に感じ取ります。日記をつけて見守る、やる気がない日は「今日はしないんだね」とだけ伝える――そんな距離感が、子どもに自立心を育てます。

失敗も経験のうち――自分で責任を取る力

忘れ物や失敗も、親が手を出さずに本人に任せることで、子どもは「次はどうするべきか」を自分で考えるようになります。親がすべて手伝ってしまうと、子どもは「お母さんがやってくれなかったから」と言い訳するようになります。自分で責任を取る経験こそ、子どもの成長には欠かせません。

親子で成長するために必要なこと

素直さとチャレンジ精神を育てる

「素直にいろんな話を聞いて、いろんなことを試してみる」――これは、子どもが成長するうえでとても大切な資質です。

親が「まずは監督やコーチの話を聞いてみよう」と伝えることで、子どもも素直にチャレンジできるようになります。親自身が学ぶ姿勢を見せることも、子どもの成長に大きく影響します。

親子で悩み、乗り越える経験が成長の糧に

保護者からの相談を受けるたびに感じるのは、「親子で悩み、向き合い、乗り越える過程そのものが、何よりの成長ストーリー」だということです。試合に出られない、やる気が続かない、補欠で悩む――どんな悩みも、親子で一緒に考え、行動し、少しずつ前に進むことで、必ず成長につながります。

まとめ――相談現場で見えた親子の成長ストーリー

少年野球の現場には、さまざまな悩みや葛藤があります。しかし、保護者が「助言を求める」姿勢で相談し、子どもの努力を認め、見守り、時には一緒に悩み、乗り越えていくことで、親子は確実に成長していきます。補欠の期間も、やる気が続かない時期も、すべてが「親子で成長するための大切な時間」です。

これからも、悩みを抱える保護者の皆さんに寄り添い、親子の成長を応援していきたいと思います。どんな小さな悩みでも、ぜひ気軽にご相談ください。親子で歩む野球の日々が、かけがえのない成長ストーリーとなることを願っています。

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