息子が小学1年のある夜、夕食後に流れていたプロ野球中継をじっと見つめながら「ぼくもあんなふうに打ってみたい」とつぶやいた瞬間から、わが家の野球生活が始まりました。最初はゴムボールを投げても私の足元までしか届かず、バットを振っても空振りばかり。

それでも、新聞紙を丸めたバットで遊んだり、リビングで風船を追いかけたりと、まずは“遊び”として取り入れたことで、「できないからやめたい」ではなく「もう一回やってみたい」という言葉が増えていきました。
この記事では、そんな親子時間の実体験をもとに、おうちと近くの公園だけで「打つ・投げる・捕る」を楽しく身につけるわが家流の工夫をまとめてお伝えします。
「自宅練習の基本的なアイデアを知りたい方は、初心者でも安心!自宅でできる野球遊びと基礎練習の工夫の記事もあわせてご覧ください。」
家庭練習でいちばん大事にした3つの視点
目的は技術より「自信と笑顔」
家庭での練習では、「きれいなフォーム」より先に「楽しそうな顔になっているか」を見るようにしてきました。ボールを一度も捕れなくても、親がニコニコしながら付き合っていると、子どもは「もう一回やってみる」と不思議と前向きになります。
実際に、風船を投げ合うだけの遊びでも、娘がキャッチに成功した瞬間、顔を真っ赤にして笑いながら「あと10回!」と自分から回数を増やしてきたことがありました。そのとき、「上手さより先に“楽しい”が育てば、技術はあとからついてくる」と実感しました。
親も一緒にプレイヤーとしてミスをしながら笑い合う時間そのものが、子どもにとっては何よりの練習になっていきます。
毎日10分でOK!継続は楽しさの原点
平日は学校や宿題、習い事で子どもも大人もバタバタしがちです。そこでわが家では、「1日10分だけ」「タイマーが鳴ったら終了」と決めて、短時間でも“やり切った感”が残るようにしました。的当ての日は、ペットボトルにシールで顔を描き、「今日は誰を倒す?」と子どもに選ばせるだけで表情が一気に真剣になります。
こうした小さな仕掛けを用意しておくことで、「まだやりたい!」という気持ちから自然と練習回数が増え、結果として継続しやすくなりました。親も横で一緒に投げたり打ったりしながら楽しむことで、「練習=怒られる時間」ではなく「家族で笑う時間」として習慣化できました。
「失敗したときの声かけややる気の引き出し方については、子どもの挑戦を輝かせる言葉の魔法の記事も参考になります。」
リビングと玄関前でできる「打つ・投げる・捕る」のわが家流あそび練習
【打つ】新聞紙バットと紙コップで“ホームラン王ごっこ”
息子が最初に手にしたバットは、スポーツショップではなく、リビングで一緒に作った新聞紙バットでした。新聞紙を数枚重ねてきつく丸め、持ち手の部分だけ色付きテープで巻くと、それだけで子どもにとっては特別な“マイバット”になります。
的には、家に余っていた紙コップに番号を書いて積み上げ、「○番を倒せたら2点」と点数を決めておきました。柔らかいボールをそっとトスすると、当たった瞬間に紙コップがパタパタと倒れ、狭いリビングでも安全に「打った手応え」と「狙う楽しさ」を同時に味わえます。
何度やっても全部倒せなかったある日、偶然芯に当たって紙コップが一気に崩れ落ちたとき、「本日のホームラン王は○○選手です!」と実況口調で声をかけると、息子はバットを掲げて一周し、顔を真っ赤にして照れ笑いしました。
こうした“物語の主人公”になれる瞬間が、「次も打ちたい」という意欲につながっていきました。
【投げる】風船バレーとペットボトルボウリングでコントロールを遊びながら鍛える
投げる動作に慣れていないうちは、細かいフォームよりも「狙ったものに届いたかどうか」のほうが子どものやる気に直結します。わが家では、飲み終わったペットボトルに水を少しだけ入れて重さを出し、三角形に並べて簡単な“ボウリングレーン”を作りました。
柔らかい布ボールを投げて1本でも倒れればハイタッチ、全部倒れたら家族総立ちで拍手。倒れ方が派手なほど笑いが起きるので、「もう1回投げたい」と自分からボールを取りに行く姿が増えていきました。
雨の日は、リビングのテーブルを少し動かして「ここからこっちが子どものコート」「こちらが親のコート」と線を決め、風船を使ったバレーゲームをよく行います。床に落とさないように腕を大きく振るううちに、いつの間にか投げるときの肩の使い方が滑らかになってきました。
風船なら顔に当たっても痛くないので、最初は怖がっていた娘も次第に前に出て打ち返すようになり、「腕を振るって気持ちいい」という感覚を自然と身につけていきます。
【捕る】お気に入りのぬいぐるみと“ごほうびキャッチ”で怖さをゼロに
硬いボールが顔の近くを通るだけで、子どもの体は一気にこわばってしまいます。そこで最初の数週間は、本物のボールをあえて使わず、娘のお気に入りの小さなぬいぐるみだけを投げ合う時間を作りました。ふわっと山なりに投げたぬいぐるみを胸の前で抱きしめる動きは、そのままグローブでのキャッチに近い動きになります。
「落としても痛くない」という安心感があることで、娘は顔を背けずに正面から両手を伸ばす姿勢を覚えていきました。週末の特別メニューとしては、小さな袋入りせんべいやキャンディを「スペシャルボール」にしたこともあります。
「ナイスキャッチできたら1つだけ開封OK」というルールにしたところ、普段はのんびりしている息子の目が一気に真剣になりました。最初は力が入りすぎて取りこぼすことも多かったのですが、「今のは手を最後まで伸ばしててよかったよ」と結果だけでなく過程も言葉にしてほめることで、だんだんと体全体でボールを追えるようになっていきました。
親もプレイヤーになって続けるための仕掛け
練習を“記録する遊び”に変える
ただ練習して終わりにせず、「記録そのものを一緒に楽しむ」と継続しやすくなります。わが家では、練習の最後にスマホで10秒だけ動画を撮って、「今日のベストプレー」を一緒に選ぶ時間を作りました。
自分の姿を画面で見ると、子どもは意外と冷静で「ここで走るのが遅かったかも」と自分から気づきを口にします。親は細かい技術を教えられなくても、「今のスイング、昨日よりスムーズだね」と変化を言葉にするだけで、子どもの自信はぐっと高まっていきました。
プロ選手ごっこ・実況ごっこで練習を物語にする
子どもは「練習」と言われるより、「ごっこ遊び」のほうが何倍も集中します。息子とは、好きなプロ選手の名前を紙に書いて引き、「今日はこの選手になりきろう」と役を決めて打席に立たせました。
さらに親が実況担当になり、「ここで打てば今日のヒーローです」と声をかけると、普段以上に真剣なまなざしでスイングするようになります。フォームの細かい説明をしなくても、「タイミングを合わせて打つ感覚」が自然と身についていくのを感じました。
親子で過ごす野球の時間は、単なる練習ではなく、思い出づくりの場です。「捕れた!」「打てた!」という小さな成功を積み上げることで、子どもは「もっとやってみたい」という前向きな気持ちを育んでいきます。
プロを目指すかどうかは関係なく、この時期の笑顔やワクワクは一生記憶に残ります。ぜひおうちや近所の公園をフィールドにして、親子だけの野球物語を紡いでみてください。

子どもの性格に合わせた声かけとメニュー調整
集中力が続かない子には「時間制ミッション」
「すぐ飽きてしまう」「途中で虫を追いかけに行ってしまう」タイプには、あらかじめ終わりの時間を決めたミッション形式が効きました。わが家では、「3分間でキャッチできた回数を一緒に数えよう」「10球中何球当てられるか記録を更新しよう」と、時間や回数を明確にしてからスタートします。
ある日、友人の小学1年生に「5本全部倒せたら、帰り道でジュース1本プレゼント」というルールを伝えると、最初はふざけていたのに、本気モードになって自分からペットボトルの位置を遠ざけて挑戦していました。
この“自分でハードルを上げる姿”が見えたとき、「ミッション形式は主体性を引き出せる」と感じました。
恥ずかしがり屋には「ぬいぐるみ観客席」
「みんなに見られている」と感じると固まってしまう子には、観客を人からぬいぐるみに置き換えるだけで、表情がふっとやわらぎます。娘とは、ソファの上にお気に入りのぬいぐるみをいくつも並べて「今日のお客さん席」を作り、その中のひとつに向かってボールを投げる遊びをしました。
投げ終わるたびに、親がぬいぐるみ役になって「今のボール、すごく速かったよ!」と声を変えて褒めると、最初は小さな声だった娘の「もう一回!」が、いつの間にかはっきりとした声に変わっていきました。
雨の日・夏の夕方…季節ごとに変えたわが家の野球ルーティン
雨の日は家の中を「ボール探検フィールド」に
外に出られない雨の日は、家の中そのものを冒険フィールドに変えました。廊下のすみやソファの裏、カーテンの陰などに紙ボールをこっそり隠しておき、「制限時間5分で全部見つけて、ゴールのかごに投げ入れられるかチャレンジだよ」と声をかけます。
子どもは宝探しをしているつもりでも、実際にはしゃがむ・立ち上がる・走る・投げるを繰り返しているので、雨の日でもしっかり体を動かすことができました。
夏の夕方は「ベースめぐりタイムアタック」
夏場は日中を避け、日が傾き始めた時間に近所の公園へ向かいます。木の根元を一塁、ベンチ脇を二塁、遊具の前を三塁と決めて、プラスチックバットで打ったらタイマーを押し、何秒で一周できるかを計測しました。
息子は「次は右方向に打ってみよう」「ここでスピードを上げよう」と自分で作戦を考えるようになり、走塁の判断力だけでなく「考えて動く楽しさ」も育っていると感じました。
親子で続ける「野球練習ノート」と小さなMVP表彰
練習内容と感想を書いて成長の見える化
ノート1冊を「わが家の野球ノート」と決め、練習が終わるたびに2〜3行だけ一緒に書き込む習慣を作りました。項目は「今日できたこと」「今日のおもしろ場面」「次にやりたいこと」の3つだけに絞ります。
たとえば「今日のMVPは、転びそうになりながらもボールを離さなかったママ」など、親の失敗も含めて笑いながら書いていくと、ページをめくるたびに家族の成長アルバムのように感じられます。
イラストや写真を貼って「自分だけの野球絵本」に
余白が多くなったページには、子どもにその日の印象的な場面を絵で描いてもらいました。三振して悔しがるパパの顔や、スライディングのポーズなど、子どもの視点で切り取られたシーンはどれも味わい深く、時間が経ってから見返すと練習内容だけでなく、そのときの感情まで思い出せます。
ときどき印刷した写真も貼り付けておくと、「このとき、雨上がりで泥だらけだったね」と話が弾み、「またああいう練習したい」と次への意欲にもつながっていきました。


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