子どもが何かに挑戦した結果、うまくいかなかったとき。つい親は「どうしてできなかったの?」という言葉をかけてしまいがちです。私もかつてはそうでした。しかし、ある出来事をきっかけに、声のかけ方が大きく変わりました。
結果だけを見るのではなく、その挑戦の過程や努力に目を向けること。それが、子どものやる気を何倍にも引き上げる鍵になると気づいたのです。今回は、私自身が体験したエピソードを交えながら、失敗を“成長の養分”に変える声かけ術をご紹介します。
我が家の息子が変わった“魔法の言葉”
野球の試合でエラー連発…涙の帰宅
小学2年生の息子が、ある日少年野球の試合で三度続けてボールを捕り損ねました。ベンチでは下を向き、一言も話さず。帰宅の道中も無言で、普段は自然に握ってくる手さえ伸ばしてきません。私も親として心が痛み、「何があったの?」と聞きたくなりましたが、その瞬間、以前聞いたコーチの言葉を思い出しました。「結果じゃなく、挑戦を見てあげてください」。
そこで私は「今日の試合、本当に一生懸命だったね。緊張しても、最後までボールを追っていたよ。勇気のあるプレーだったと思う」と声をかけました。すると息子の表情がわずかに柔らぎ、うっすらと笑みを隠すようにうなずきました。
翌日の練習で見せた変化
翌朝、まだ日が昇りきらない時間に、小さな足音が廊下を走る音で目を覚ましました。リビングに行くと、息子がすでにユニフォーム姿でグローブをはめて立っています。「今日、キャッチボールしよう!」と笑顔で言った姿に、私自身が胸を打たれました。
“あの一言”が、息子の中に小さな火を灯した瞬間だったのです。
失敗後の声かけで気をつけたい3つのポイント
原因を問い詰めない
失敗の直後は、原因探しではなく感情の整理を優先します。「なんで?」という質問は、子どもにとって責められているように感じやすく、心を閉ざすきっかけになります。代わりに、「どのプレーが一番難しかった?」や「どこがうまくいかなかった?」という聞き方をすると、子どもは自分の中で出来事を振り返りやすくなります。これは、成長に必要な“自己分析力”を育てます。
事実”と“感情”を分けて話す
「ボールを落としたことは事実。でも、一生懸命追いかけてたよね」など、失敗した事実と頑張った気持ちを分けて認めると、子どもは冷静に受け止められるようになります。
次につながる一言”で締めくくる
「次はどこに気をつけたらいいかな?」という問いかけは、失敗から学ぶ姿勢を引き出します。反省よりも“改善”に向かうよう導くのがポイントです。ある日、練習試合の帰り道で「今日はエラーしなかったね」と言ったところ、息子が「うん。でも、もっと飛びつけたらよかったな」と自分から反省点を話し始めました。
このとき、「失敗を恐れず次を考える」という習慣が、日々の声かけの積み重ねで芽生えてきていることを実感しました。
継続的な声かけがやる気を底上げする
数ヶ月後、息子が見せた変化
「失敗してもいい。君はチャレンジしている」という声かけを繰り返したことで、息子は「失敗は当たり前」「でももっと上手くなれる」と口にするようになりました。試合でミスをしても「次頑張る」と切り替えが早くなり、仲間にも「大丈夫」と励ましの言葉をかけるように。
自己肯定感と挑戦力が育つ
親の声かけ次第で、子どもは“自分を信じる力”を育てます。失敗を重ねながらも、「大丈夫。僕はできる」と思える環境こそが、真のやる気スイッチを入れるのです。
声の力を信じよう
失敗=成長の種
失敗を乗り越えるには、まずは親の“受け止め方”から。責めるのではなく、共感し、挑戦したことを認めるだけで、子どもは新しい一歩を踏み出します。
今日からできる声かけ術
・「チャレンジしててすごいね」
・「緊張しながらも頑張ってたよ」
・「次に向けて、どうしたらいいか一緒に考えよう」
たった一言でも、子どもの心には深く響きます。声の力を信じて、“失敗”という名の宝物を、親子で育ててみませんか?
兄弟・チームメイトとの関係性にも声かけが効果あり
比較より個別の頑張りを認める
兄弟やチームメイトと比べて、「〇〇くんはすごいのに…」という言葉は、子どものやる気にブレーキをかけてしまいます。それよりも、「君はいつも周りをよく見ているね」と、その子自身の特性を認める言葉が、ポジティブな自己認識につながります。
仲間とのミスをフォローする姿勢も育てる
我が家では、息子が仲間のエラーに対して「大丈夫だよ」と言った場面に、「その言葉、すごくいいね」と声をかけました。自分の経験が共感につながり、周囲の人との関係も深まっていきます。親の声かけは、技術だけでなく人間関係にも影響を与えるのです。
子どもの言葉を引き出すコツ
オープンな質問で内面にアクセス
「どうだった?」ではなく「どこが楽しかった?」「一番頑張ったところは?」など、具体的な質問で子どもが話しやすくなります。我が家では、夜ごはんの時間に「今日、困ったことはあった?」と聞くだけで、失敗の話も自然に出てくるようになりました。
沈黙も受け入れる余裕を持つ
すぐに答えが返ってこなくても、「考えてるんだね」「あとで教えてね」と待つ姿勢が、安心につながります。時間がたった夜に、「さっきのことだけど…」と息子が自分から話し始めたこともありました。
周囲の理解もやる気アップには不可欠
コーチや先生との連携
少年野球の指導者にも、「失敗した子に、どう声をかけていますか?」と聞いてみました。多くの指導者は、「成功体験より挑戦の回数を褒めるようにしている」と言います。親がこの姿勢を理解して共有することで、家庭でも一貫したサポートが可能になります。
家族全体でのサポート体制
祖父母やきょうだいも含めて、「〇〇はよく頑張ってるよね」と声をそろえることは、子どもにとって大きな安心です。誰もが失敗を責めず、挑戦を応援する――そんな空気が、子どもの“やる気基盤”をつくっていきます。
親自身の心構えを整えるために
失敗をどう受け止めるかは親の“余裕”で決まる
子どもが失敗したとき、親自身も焦りや不安を感じることがあります。「このままでいいのかな?」と悩むことも。しかし、一歩下がって「失敗しても成長している」と考えることで、冷静に向き合えるようになります。自分の感情を整理することが、効果的な声かけの土台になります。
親も失敗談を話すことで距離が縮まる
「パパも昔、野球でバッターに当てて泣いたことあるよ」など、自分の失敗を笑って話すと、子どもは「自分だけじゃない」と安心します。我が家では、息子が「じゃあ僕は失敗しても成長途中ってことか」と言って笑ったことが印象的でした。
まとめ:声かけは“子育ての魔法”
技術ではなく“気持ち”を育てる
野球でも勉強でも、技術は時間をかければ上達しますが、気持ちの部分は環境次第。親の声かけは、その環境づくりの中心です。子どもの挑戦を肯定し、失敗に対して「よく頑張ったね」と言えることが、今後の成長の方向性を大きく左右します。
習慣的な声かけが未来を変える
魔法のように一瞬で変化するわけではありません。けれど、日々の中で積み重なるひと言ひと言が、子どもの自己肯定感を静かに根付かせます。失敗を“終わり”ではなく“始まりのきっかけ”と捉える。挑戦を喜び、過程を認める。
この積み重ねこそが、子どもの未来を力強く支える土台になるのです。
コメント