父子の距離が一気に縮まった理由――わが家流「野球コミュニケーション」のすべて

「最近、子どもとの会話が少なくなった気がする」
そんなモヤモヤを抱えていたのが、つい半年前の私でした。家にいてもなんとなくスマホやテレビに流れてしまい、会話があっても小言ばかり。そんな日常を変えてくれたのが、息子の「野球やりたい!」という一言です。

親として野球経験ゼロの私が、子どものチャレンジに向き合うことで体験した親子の変化――本記事では他ではなかなか語られないリアルなエピソード、日々の具体的な関わり方、そこで気づいた意外な喜び・困りごとまで、余すことなくお伝えします。

「どうすれば子どもともっと仲良くなれる?」「別のスポーツや習い事でも応用できる?」と悩む方にも、少しでも役立つ実体験となれば嬉しいです。

【きっかけ】小学2年生、突然の「野球やりたい!」発言

野球なんて、正直テレビ観戦くらいしかしたことがない――。そんな私の背中を押したのは、ある雨上がりの日の夕食後でした。突然、「お父さん、僕も野球やってみたい!」と息子がポツリ。クラスメートの誘いで興味を持ったようですが、内心「道具の名前すら分からないし、親として大丈夫かな……」と不安でいっぱいでした。

それでも、本人の目がキラキラしていたあの日のことは、今でも忘れられません。本気の「やりたい」という気持ちを目の前に、つい「できる範囲でまず一歩やってみるか」と腹をくくったのが、振り返れば親子関係の再スタートでした。

【変化①】グローブ選びから始まる“共通の話題”

野球の話題で最初に盛り上がったのが、息子のグローブ選びです。野球用品店で店員さんに質問攻め状態となり、お互いどきどきしながら片っ端からグローブを試着。普段は色柄すら好みが真逆なのに、不思議と「これは目立つね」「指が動きやすい!」と意見が合いました。

「どれが一番キャッチしやすい?」と一緒に手を伸ばしたコミュニケーションは、親子関係に新しい風を感じた瞬間です。特に印象的だったのは、「これが僕のお守りにする!」と息子が自分で選んだ赤と黒のグローブを、帰宅後もずっと眺めていたこと。

その日から「今度はどこの公園でキャッチボールする?」「次はバットも試してみたいね」と、我が家の日常会話が野球中心にガラリと変化していきました。

【変化②】キャッチボールが生んだ沈黙OKのコミュニケーション

次に訪れたのは、親子のキャッチボール習慣。付き添うのではなく「一緒に楽しむ」――。これが我が家のキャッチボール習慣の始まりでした。最初はお互いに投げ方もおっかなびっくり。ボールがとんでもない方向にそれて大笑いしたり、グローブを反対にはめていた息子に「それじゃ取れないぞ!」と突っ込んだり。

技術はショボかったですが、「一歩一歩うまくなる嬉しさ」を共有できたのが新鮮でした。ふと思ったのは、キャッチボールをしている間は無理に「何を話そう」と考えなくてもいい、沈黙が妙に心地良いということ。

自然と「最近どう?」と聞くと「実はね、今日学校で…」とポツリ。私自身もボールに集中していたからか、「つい叱ってしまう」クセも和らいだ気がします。一緒に体を動かす時間が、想像以上に息子との心理的な距離を近づけてくれたのです。

【変化③】親の関わりが変わったことで、子どもの態度も変化

ある日、いつも快活な息子が玄関で顔を曇らせていました。「今日ミスして、みんなの前でコーチにしかられちゃった……」と。以前の私なら「そんなの気にするな!」と軽く片付けていたでしょう。でもキャッチボールの時間に、手を止めずに「そうだったんだ。どう感じた?」と返してみました。息子はポロポロ悔しかったことや、再挑戦したい気持ちを話し始めました。

私は「失敗しても、また次に向かう君が俺は好きだよ」と伝えたら、彼は少しだけ涙目で「お父さん、分かってくれてありがとう」とポツリ。親の言葉ひとつで、子どもの気持ちは大きく動く――それを実感できた出来事です。あの日から、打ち明け話をしてくる頻度が格段に増え、親子の信頼感も徐々にですが深まった気がします。

【変化④】「応援席」から感じた親の役割

「応援席に座るだけで親としての役割は果たせているのだろうか?」と悩んでいた時期もありましたが、ある練習試合の日。その日の息子は空振り三振でガッカリしていましたが、帰り道「お父さん、応援席で頑張れって顔して見てくれてたでしょ?あれ、すごく安心した」とぽつり。

それ以来、私が技術的に教えられなくても、「会場にいる」「見守ってる」だけで十分なんだと気付きました。失敗のあとも、成功した試合後も、必ず目が合うまで手を振る。「そこにいる」こと自体が、息子にとって安心材料になっていると強く感じるようになったのです。

【実感】親子関係がこう変わった!

野球を始めて数ヶ月、我が家のコミュニケーションは大きく様変わりしました。会話の量は目に見えて増え、週末の公園でも、平日の夕飯でも「今日の練習どうだった?」「新しいポジションやってみた?」と話題に困らなくなりました。

また、「うまくいかない時こそチャレンジして偉かったね」と伝えることで、子どもを褒めるポイントも変化。親自身も野球知識を勉強し始め、「分からないからこそ息子に質問してみる・自分も学ぶ姿勢」が、自然と支えることにつながりました。

不思議なもので、「お父さんが応援している」と息子が感じるだけで、失敗にも前向きになれるようです。実は私自身も、「子どもの挑戦を一緒に楽しめる親」でいたいと思うようになり、日々小さな成長や発見を喜び合える過程そのものが宝物になっています。

他の家庭から聞いた「親子が変わった」エピソード

私自身も野球を通じて親子関係が変わっていく実感を持っていますが、周囲のお父さん・お母さんたちにもこんなエピソードを聞きました。共働きで忙しい友人夫婦は、送迎を交代しながら二人ともキャッチボールの楽しさに目覚めたとか。「野球の話になるとパパのほうが熱くて、子どもに“今度の試合でパパも応援来てよ”とリクエストされています」と苦笑い。

また、野球未経験のママ友は「キャッチボールなんて自信なかったけど、一緒に練習するうちに『ママとボール遊びできて楽しい!』と何度も言ってもらえて涙が出た」と言っていました。さらに、中学生で反抗期に入ったお子さんを持つ親御さんは「普段は割と無口であっさりしているのに、キャッチボールの時間だけは言葉ではなく気持ちのやり取りができる」と。

いずれも野球の上手下手や経験の有無ではなく、一緒にボールを投げ合う「時間」そのものが、親子の距離を縮める鍵だと感じます。

まとめ:野球は親子の“心のキャッチボール”

わが家を変えたのは、「野球そのもの」ではなく、野球を通じて生まれた“やりとり”や“小さなチャレンジ”の積み重ねでした。親の知識や技術に自信がなくても、グローブを一緒に選び、失敗もケガも笑い合いながら過ごした日々が、気がつけばかけがえのない思い出になっています。

結局、「うまく教える」必要はなく、ただ一緒に楽しみ続けることこそが親子の絆を深める近道なのだと私は実感しました。今日の一球が、明日の「がんばれ」や「ありがとう」に必ずつながる――そう信じて、これからも息子と野球コミュニケーションを続けていこうと思います。

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