子どもが自分に自信を持てるかどうかは、将来の学びや人間関係、挑戦への姿勢に大きく影響します。私は長年、少年野球の指導や家庭教育の現場で多くの親子と関わってきました。
その中で実感するのは、「親の接し方ひとつで、子どもの自信は大きく変わる」という事実です。本記事では、私自身の体験談や現場でのエピソードを交えながら、親が日々意識したい具体的な接し方についてお伝えします。
「認める」ことから始める――ありのままを受け入れる
子どもの個性やペースを尊重する
子育ての現場で印象的だったエピソードがあります。私が指導していた少年野球のグラウンドで、運動が苦手だったY君はよく試合でミスをして落ち込んでいました。お母さんも「うちの子はダメかも」と悩んでいましたが、私は「Y君はいつもチームメイトのために声をかけ、最後まで諦めずやり遂げる強さがある」と伝えました。
お母さんがその部分を繰り返し褒めるようにすると、Y君は次第に笑顔を取り戻し、自分から積極的に練習に参加するようになりました。この経験から、私は「子どものできない部分よりも良さを認めて声をかけること」の大切さを強く感じています。日頃から子どもの個性をしっかり受け入れることが、子どもの自己肯定感の基礎を作ると確信しました。
「できないこと」より「できたこと」に目を向ける
家庭教育では、つい「ここが足りないよ」と指摘してしまいがちですが、私は指導を通じて「まずは小さな成功体験を褒める」ことの威力を実感しています。私の教え子の一人、Mちゃんはもともと宿題に消極的で、なかなか自分から取り掛かりませんでした。
そこで「今日、ここまでやれたんだね。すごい進歩だよ」と具体的に褒めると、Mちゃんは翌日から少しずつ自分から始めるようになりました。たった一言がきっかけで、子どもの中に「自分はできる」という感覚が芽生えることを、私は何度も見てきました。
「具体的に褒める」――行動や努力を言葉にする
結果だけでなく過程や挑戦を褒める
野球チームで指導していたK君は、ミスをするとすぐに落ち込んでしまうタイプでした。ある試合でエラーをしてしまい悔しそうにしていた彼に、私は試合後に「今日はミスもあったけど、最後まで諦めずに走り続けたのは本当に素晴らしかった。
そこに君の頑張りが見えたよ」と伝えました。その言葉をきっかけに、K君は「頑張りを評価してもらえた」と感じ、次の練習から積極的に挑戦する姿勢が見られるようになりました。具体的に努力や行動を褒めることは子どもの自信を持たせる効果が高いと感じます。
「何がよかったか」を具体的に伝える
「すごいね」「えらいね」だけでなく、「今日は自分から友だちに声をかけていたね」「難しい問題に挑戦したね」と、行動や努力の内容を具体的に伝えることで、子どもは自分の成長を実感できます。
「子どもの話を最後まで聞く」――共感と信頼の土台
途中で否定せず、まずは受け止める
ある保護者の方は、「子どもが学校の出来事を話してくれない」と悩まれていました。話を詳しく聞くと、親御さんがつい「それは違う」「そうじゃないよね」と途中で訂正したり否定してしまうことが多かったのです。そこで私は「まずは子どもの話を最後まで受け止めることを意識してください」と伝えました。
すると数週間後には、子ども自身が自分の気持ちや学校のことを自然に話すようになったと聞きました。話を聞く時は否定せず、感情に共感することが、子どもの心を開く大切なポイントだと改めて実感しました。
「どう感じた?」と気持ちを引き出す
「今日はどうだった?」だけでなく、「どんな気持ちだった?」「何が楽しかった?」と気持ちを深掘りする質問をすることで、子どもは自分の思いを整理し、自信を持って伝えられるようになります。
「自己決定の機会」を増やす――小さな選択の積み重ね
自分で選び、決める経験が自信につながる
私が指導した中学生のS君は、もともと親御さんから「これを必ずやりなさい」と細かく指示されて育ちました。自分で何かを決める機会がほとんどなかったために、やや受け身な姿勢でした。そこで「今日は自分で練習メニューを組んでみよう」と提案してみると、最初は戸惑いながらも少しずつ自分の意思で取り組み始めました。
練習後に「自分で決めた内容をやり遂げられたことはどうだった?」と話すと、「やればできるんだなという気持ちになった」と答えてくれました。日々の中で「選ぶ機会」を増やすことは、子どもの自己効力感を高める重要な要素です。
小さな選択から始めてみる
「今日はどっちの服を着る?」「宿題は先にやる?あとにする?」といった小さな選択肢を与えることで、子どもは「自分で決めた」という実感を持てます。決めたことを否定せずに受け入れることで、さらに自信が育ちます。
「一緒に挑戦する」――親子で経験を共有する
難しいことは「一緒にやってみよう」と声をかける
私自身の経験ですが、息子が自転車の補助輪を外して乗りたいと言い出した時、怖がる彼の手を取って一緒に練習しました。何度も転びながらも「一緒に頑張ろう」と励まし続けた結果、数日後に自転車に自信を持って乗れるように。
成功の喜びを親子で共有することで、息子の「やればできる」という自信はぐっと深まりました。親が失敗を恐れず挑戦する姿勢を示すことが、子どもにとって最高のお手本になると感じています。
親の姿勢が子どもに伝わる
親が「失敗しても大丈夫」「一緒に考えよう」と前向きな姿勢を見せることで、子どもも新しいことに挑戦しやすくなります。親のチャレンジ精神や失敗を恐れない姿勢は、子どもにとって最高のお手本です。
「愛情と安心感」を伝える――スキンシップや感謝の言葉
毎日の「ありがとう」「大好きだよ」を惜しまない
ある保護者の方は「毎日寝る前に子どもに『今日もありがとう』『大好きだよ』と言ってハグを欠かさない」と話されました。その子は家庭での愛情をたっぷり感じているからか、学校でも積極的に友達と交流し、挑戦を怖がらないとのことでした。
日々の温かな言葉やスキンシップが、安心して自己表現できる土台を作り、子どもの心の成長を促していることを目の当たりにしました。親からの愛情表現は単なる習慣ではなく、子どもの自信の原点です。
スキンシップや笑顔の効果
小学校低学年までの子どもには、スキンシップや笑顔を意識的に増やすことで、親子の信頼関係が深まり、自信を持って行動できるようになります。
「失敗を責めず、挑戦を応援する」――チャレンジ精神を育てる
失敗を成長のチャンスと捉える
ある女の子Gさんは、絵のコンクールで入賞できず落ち込んでいました。お母さんは「挑戦したことが素晴らしいよ」「次はどんな絵を描きたい?」と声をかけ、失敗を責めませんでした。
Gさんは「また挑戦してみたい」と前向きな気持ちになり、翌年は自分から応募するようになりました。
「またやってみよう」と背中を押す
「失敗しても大丈夫」「次はどうしたい?」と声をかけることで、子どもは「挑戦してもいいんだ」と思えるようになります。
「親自身も学び、成長する姿を見せる」
親の背中を見て子どもは育つ
私自身、子どもと一緒に新しいことに挑戦したり、失敗を素直に認めたりする姿を見せることで、子どもが「大人も頑張っている」と感じてくれた経験があります。親が学び続ける姿勢は、子どもにとって大きな刺激になります。
「安心できる環境づくり」――心の安全基地になる
愛情と安全な環境が自信の土台
子どもが安心して過ごせる家庭環境は、自己肯定感や自信の基盤です。親が「どんなときも味方だよ」という姿勢を示すことで、子どもは安心して自分らしくいられます。
まとめ:日々の積み重ねが一生の自信になる
子どもの自信は、親のちょっとした声かけや接し方、日々の積み重ねによって育まれます。ありのままを認め、具体的に褒め、話をよく聞き、自己決定の機会を増やし、一緒に挑戦し、愛情を伝え、失敗を責めず、親自身も成長する姿を見せる――。
こうした日々の関わりが、子どもに「自分は大丈夫」「やってみよう」という一生の自信を与えてくれます。今日からぜひ、ひとつでも意識してみてください。親子で一緒に成長し、笑顔あふれる毎日を過ごせますように。
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